1. 自己理解が深まり、自分の「好き」と「得意」が明確になった

15ヶ月の旅は、自分自身を深く見つめ直すための、最高の時間でもあった。日本では気づけなかった、あるいは見過ごしていた自分の「好き」と「得意」が、くっきりと輪郭を現した。

新たな環境で再認識した、自分の「強み」

もともと自覚はあったが、新しい環境にためらいなく飛び込めることは、間違いなく自分の強みなのだと再認識した。未知の環境は恐怖よりもワクワクが大きく、常に心を躍らせてくれた。

特に印象的だったのは、アフリカでの体験だ。長く滞在したことで、現地の人々と深くコミュニケーションをとる機会に恵まれた。旅先で出会う日本人の中には、アフリカの人々との意思疎通に苦手意識を持つ人も少なくなかった。その中で、自分が彼らと心から楽しんで対話できていることに気づき、「これは得意分野なのだろうな」と実感できたのは大きな収穫だった。

のスタイル、8つの「好き」

旅を重ねる中で、自分たちが本当に心地よいと感じる旅のスタイルも明確になった。それは、まるで人生の価値観を映し出す鏡のようであった。

  • ひとり旅より、ふたり旅
  • 人工物より、自然
  • 詰め込む旅より、ゆとりのある旅
  • パッケージ化された旅より、工夫する過程を楽しむ旅
  • 大勢が勧める定番スポットより、自分たちにハマるマイナースポット
  • お金をかけるのは、宿泊費よりも「体験費」
  • SNS映えよりも、「機能性」
  • すべてが揃った大荷物より、多少不便でも身軽な荷物

この8つの「好き」は、これからの旅、そして人生の指針になってくれるはずだ。

パートナーと見つけた、一生モノの「趣味」

日本での生活は、仕事や個々の付き合いがあり、夫婦が同じ趣味に時間を割くのは意外と難しいものだ。しかし、24時間365日を共にする旅の中では、状況が違った。

どちらかが「あまり興味ないけど、せっかくだしやってみるか」と相手の趣味に付き合う。そんな風にして、一緒に新しいアクティビティに挑戦する機会が格段に増えた。その中で出会ったのが、スキューバダイビングとトレッキングだ。これらは感動を分かち合ったり、困難を乗り越えたりする素晴らしい体験となった。間違いなく、これからも私たちの人生を豊かにしてくれる、一生モノの趣味になるだろう。

2. パートナーとの絆に、“戦友”的な要素が加わり、深化した

出発前、私たちは「もう話し尽くしたのではないか」と思うほど、あらゆることについて語り合ってきた。それでも、この旅は私たちの関係性を、さらに深く、まったく新しい次元へと引き上げてくれた。

24時間一緒だからこそ深まった、本当の「相互理解」

旅を通じてパートナーへの理解が深まった背景には、3つの環境的要因があったように思う。

一つ目は、「パートナーが自由に考えられるようになったこと」 。出発後、パートナーは「仕事をしていたときは、随分と囚われた考え方をしていたように思う」と打ち明けた。その解放が、彼女の新たな一面を引き出し、私の理解を深めてくれた。

二つ目は、「オープンにならざるを得ない環境」 。持ち物はバックパック一つ。プライベート空間が十分に確保できない安宿。そんな環境では、物理的にも精神的にも、お互いをさらけ出すしかなかった。この意図せざる共有が、結果として相互理解を強制的に促進してくれた面もあったように思う。

そして三つ目は、「未知の出来事との遭遇」 。ボッタクリ価格の交渉、時間を守らないドライバー、連絡がつかない宿のオーナー。日本ではあり得ないトラブルの連続だ。その度に「どうする?」「なぜそう考えた?」と対話を重ね、お互いの思考プロセスや価値観を、これまでにない解像度で知ることができた。

トラブルを乗り越え、高まった「コミットメント」

もともと、この旅の最大の目的は「パートナーと最高の思い出を作ること」であった。そして、その目的は十二分に達成できた。

しかし、得られたのはそれだけではない。数々の困難を共に乗り越える中で、ふたりで幸せな人生を作るとコミットしたパートナーシップに、背中を預け合える「戦友」的な要素が加わり、関係性が質的に変化していくのを感じた。この旅を通じて、パートナーとの人生をより良いものにしていきたいというコミットメントは、かつてなく強固なものになったのだ。

3. 人生で追い求めたい「欲求」がアップデートされた

世界一周は、私の中に眠っていた様々な「欲求」を揺り起こし、その優先順位を大きく書き換えるきっかけとなった。

旅を続けるための「健康」と「稼ぐこと」

旅先で痛感したのは、「健康」 の圧倒的な価値だ。どれだけ素晴らしい景色や文化が目の前にあっても、心身が健康でなければ、それを100%享受することはできない。今後の人生も旅を楽しみ尽くすために、長く健康でいたい。その想いは、かつてなく切実なものになった。

同時に、「稼ぐこと」 への欲求も増した。出発前は「ある程度稼げれば十分」と考えていたが、世界中で素晴らしい体験を重ねるたび、「もっと色んな海に潜りたい」「次は家族で来たい」と夢は膨らむばかりだ。その夢を実現するためには、やはりお金が必要だ。稼ぐことは、人生の選択肢を増やすための力なのだと、ポジティブに捉えられるようになった。

世界と繋がる「貢献」と、2人で創る「事業」

旅での出会いは、新たな欲求も芽生えさせてくれた。特に、逆境の中で努力し、「日本で働きたい」と夢を語る人々との出会いは、私の 「貢献」 欲を強く刺激した。彼らのために何かできないか。そう考え、まずは自分が持つ情報を提供することから始めている。

そして、パートナーとの関係性が深まる中で、「事業」 への欲求も生まれた。未知の出来事に共に立ち向かうことが、私たちの絆を強くしたように、次は「一緒にビジネスをする」というチャレンジが、私たちをさらに成長させてくれるのではないか。そんなワクワクが止まらない。2人で意思決定できる仕事のスタイルは、今後の人生をより主体的にコントロールしていく上でも、理想的な形だと感じている。

いつの日か、パートナーとのビジネスを通じて、旅先で出会った彼ら、彼女らに力になれたら素敵だな思う。

4. 「身体ひとつで、世界中どこでも生きていける」という実感

旅の途中、私は想定外のことに多くの時間を費やすことになった。趣味のポーカーだ。プレイを重ねるうちに「自分の可能性を試したい」という想いが強くなり、パートナーに相談したところ、力強く背中を押してくれた。

それから、ポーカーは旅の目的の一つになった。最終的に、世界11カ国で合計約600時間プレイ。プロとしてやっていけるレベルには至らなかったが、この経験は私に大きな自信を与えてくれた。「自分の身体一つ、ポーカーさえできれば、世界中どこでも生きていける」、そういう実感を得れた事は、自分の大きな財産になった。

5. 人生のゴールが「旅と共に生きる」ライフプランに固まった

これら4つの変化を経て、私たちの理想の人生の解像度は、劇的に高まった。その中でも最大の収穫は、人生における「旅」の位置付けが、根本から変わったことだ。

  • 出発前: 今回が、人生で最後の長期旅行かもしれない。
  • 出発後: 旅をすればするほど、行きたい場所は増えていく。時間が全然足りない。よし、将来また来よう。

この変化は決定的であった。旅は「特別なイベント」ではなく、私たちの人生に定期的に組み込まれる「ライフイベント」の一部になった。

今後の人生を、「旅と共に生きる」ことを前提にプランニングしていく。15ヶ月の旅の末に、そんなワクワクする未来を描くことができたことに、嬉しく思う。